ここでは、医学の基礎知識として、「障害・疾病の分類」と「主要な身体的疾病」および「移植・再生医療」についてまとめます。
用語:
代表的な障害・疾病の分類や指標としては、「国際生活機能分類(ICF)」、「国際疾病分類(ICD)」、「DSM」が挙げられます。
国際生活機能分類(ICF)は、WHOによって公表されている、障害・健康の程度の評価・分類です。
WHOによって公表されている、疾病の診断分類。
現時点では英語版は「ICD-11」、日本語版は「ICD-10」が最新版。
アメリカ精神医学会によって発行されている、精神障害の診断と統計マニュアル。
現時点では、「DSM-5」が最新版。精神症状を論理的推察と統計学的要素を取り入れ分類されており、病因論には基づいていません。
DSM-5では、多軸診断は廃止されており、多元的診断が導入されています(詳細:DSM-5の特徴)
死亡率と疾病率の両方を示す単一指標。WHOが採用。
「疾病により障害を余儀なくされた期間(障害生存年数)」と「早死により失われた期間(損失生存年数)」の合計を意味します。
日本のDALY(総年数)の割合は、上位から精神疾患が19%、がん18.5%、循環器疾患15.2%(糖尿、脳卒中、心疾患など)となっています。
「症候」とは症状と同義であり、「生理・病的生理反応によって心身に現れる変化」のことです。
症候を定義・分類して意味づける方法論を症候学とよびます。症候には「全身性(発熱、けいれんなど)」と「局所性(めまい、動悸など)」のものがありますが、それに基づいて診断を行っていきます。
ここでは、主要な身体的疾病をまとめます。
がん(悪性腫瘍)とは、細胞の遺伝子プログラムの逸脱による異常増殖のことです。
良性腫瘍(子宮筋腫など)と異なり、「自律性増殖、浸潤と転移、悪液質」という特徴があります。
(詳細:▼ がんの特徴)
日本人の2人に1人は一生のうち一度はがんになるというデータもあります(生涯罹患率:男性63%、女性47%)。
がんにおけるの「標準治療(科学的根拠に基づいた最もよい治療のこと)」は、「手術、薬物療法、放射線治療」を単独や組み合わせた方法で行われます。
循環器系疾患には、「糖尿病、慢性腎臓病、虚血性心疾患、心臓弁膜症、心不全、脳血管性障害(脳卒中)、大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症、閉塞性血管性血管炎、原発性肺高血圧症」などがあります。
(詳細:▼ 循環器系疾患)
筋・骨格系疾患には、「変形性関節症、骨粗鬆症、後縦靱帯骨化症、ロコモティブシンドローム、廃用症候群」などがあります。
(詳細:▼ 筋・骨格系疾患)
呼吸器系疾患には、「慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息、気胸、呼吸不全」などがあります。
(詳細:▼ 呼吸器系疾患)
感染とは、生物の体内もしくは表面に、病原体が寄生し、増殖するようになる事とさします。
感染症としては、ウィルスの種類によって、「風邪(風症候群)」、「インフルエンザ」、「結核」、「後天性免疫不全症候群(AIDS)」などがあります。
「結核」は、結核症による感染症であり世界人口の約30%が罹患しているとされます。
「AIDS」は、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)による感染症であり、重篤な免疫不全により悪性腫瘍を引き起こします。
(詳細#1:▼ 感染の種類と感染経路)
(詳細#2:▼ 免疫担当細胞(免疫細胞))
先天性疾患とは、出生前に形態的・機能的病態が生じる疾患です。遺伝的要因と、多数の環境要因及び、その相互作用によって出現するとされています。
「単一遺伝子病、ミトコンドリア病、多因子遺伝病、染色体異常、外因性先天異常」などに分類されます。
(詳細:▼ 先天性疾患)
生活習慣病とは、生活習慣がその発症・進行に関与する疾患群のことをさします。
「肥満、2型糖尿病、高血圧症、高脂血症、高尿酸血症、大腸がん、循環器病、肺扁平上皮がん、慢性気管支炎、肺気腫、アルコール性肝疾患、歯周病」などが該当します。
生活習慣病の援助においては、「行動変容ステージ」に合わせた介入が必要とされます。
(詳細:▼ 生活習慣と疾患との関連表)
「2型糖尿病」は、食習慣・運動習慣・喫煙習慣に関連するとされ、40歳以上の多い生活習慣病でもあります。下記のような特徴があります(関連:1型糖尿病)。
「1型糖尿病」は、おもに自己免疫を基礎にした糖尿病であり、小児から思春期の発症が多く、生活習慣と関係なく発症します。
インスリンが欠乏するため食事療法と運動療法とあわせて、インスリン製剤の薬物療法を行います。
「肥満」とはBMIが25以上の状態であり,「肥満症」とは肥満かつ2型糖尿病や高血圧といった健康障害を伴う,またはそのリスクが高い内臓脂肪型肥満のことです。
「メタボリックシンドローム」とは、肥満症の1つであり,内臓脂肪型肥満に、糖尿病(2型)、高脂血症、高血圧の2つ以上が複合した病態のことをさします。
肥満症に関連するホルモンとしては、レプチンとグレリンがあります。
神経変性疾患とは、神経細胞を中心に様々な種類の退行性変化を認める疾患群とされます。大脳、大脳基底核、小脳、脊髄、末梢神経といった領域に分類されています。
「認知症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、筋ジストロフィー」などが該当します。
(詳細:▼ 筋萎縮性側索硬化症(ALS))
内分泌疾患は、ホルモンを作る内分泌腺と呼ばれる臓器に起こる腫瘍などが原因となった病気です。
「甲状腺機能亢進症/低下症、下垂体機能低下症、高プロラクチン血症、クッシング(Cushing)症候群、エストロゲン過剰症」などあります。
(詳細:▼ 甲状腺機能亢進症/低下症 )
ここでは移植や再生医療についてまとめます。
臓器障害の患者は、透析による治療や、移植による治療が必要となることがあります。
透析(人工透析)とは、血液中の有害物質を取り除く治療のことです。腹膜透析や血液透析があります。
慢性腎不全において、「腎不全保全期から末期腎不全」となると透析の対象となります。
国内には、約30万人の患者が透析を行っており、腎臓移植以外の根治療法はありません。
(詳細:▼ 腎不全保全期)
移植とは、提供者(ドナー)から受給者(レシピエント)に組織や臓器を移し植える医療行為のことです。
ドナーとレシピエントの関係から、「自家移植(自己の組織の移植」、「他家移植(他人の組織の移植)」、「人工移植(人工臓器等の移植)」に分かれます。
臓器移植法(1997年)により、心停止後の腎臓、角膜、心臓、肺、肝臓、膵臓、小腸の移植が可能となっています。
また、2010年の改正移植法では、本人の生前の拒否の意思を示していなければ、本人の意思表示がなくとも、家族の同意で可能となりました(本人の意思表示は、意思表示カード、被保険者証や運転免許証の裏で示される)。
再生医療とは、身体の構造・機能の再建・修復・形成または、疾病の治療・予防を目的として、細胞加工物を用いる医療のことです。
2014年の再生医療等安全性確保法によって、規制されており、リスク別に細胞加工物の製造から提供開始までが定められています。