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公認心理師試験用語集: 心身機能と身体構造

3 - 精神病理その他 > 82- 心身機能と身体構造

 ここでは、医学の基礎知識として、ヒトの「身体機能と身体構造」についてまとめます。

用語:成長と発達老化による変化更年期障害)/ 人体の構造や機能生理・生殖機能など(ホメオスタシス)



ヒトの成長・発達と老化
成長と発達による変化:

 成長とは「身長や体重など測定可能な形態や量の変化」を意味します。
 発達とは「運動機能や精神機能など質の変化」を意味します。
 成長・発達は、「個人の遺伝的要因と環境の相互作用の影響」、または「生物・心理・社会的な影響」を受けます。

<成長・発達による身体的変化>
 (関連:乳幼児の発達

  1. 身長は、生後1年で1.5倍に、体重は、3000gから10kgと約3倍に増加する。身長増加は思春期スパート後に停止。
  2. 粗大運動の発達では、3〜4カ月で「首がすわる」、7〜8カ月で「おすわりができる」、8カ月で「はいはい」、12カ月で「立ち」、12〜15カ月で「歩く」、2歳ごろには「両足で飛べる、階段を上れる」、3歳ごろには「全身運動ができる」。
  3. 微細運動の発達では、4〜6カ月で「手全体でつかむ」、1歳で「つまむ」、1歳半で「殴り書き」、2歳で「直線を引く」、3歳で「ハサミを使う」。
  4. 視覚は、2歳ごろまでに解剖学的基礎が完成、3歳で6割、5歳で8割以上が、視力1.0以上となる。
  5. 聴覚は、2歳ごろまでに解剖学的基礎が完成、5歳〜6歳で成人レベルとなる。
老化による変化:

 老化とは、「加齢に伴い、身体の恒常性が変化し崩壊する一連の過程」を意味します。
 「加齢による、意図しない衰弱、筋力の低下、活動性の低下、認知機能の低下、精神活動の低下など健康障害を起こしやすい心身の脆弱な状態」のことは「フレイル」と呼ばれます。
 フレイルに陥った高齢者を早期に発見し、適切に介入をすることにより、生活機能の維持・向上を図ることが期待されています。

<老化による身体的変化>

  1. 運動神経伝達速度が低下、骨格筋の筋肉量減少(サルコピニア)、筋力低下。運動機能は低下。
  2. 視覚、聴覚、嗅覚、味覚、皮膚感覚(温度覚,触覚,圧覚,痛覚など)、平衡感覚、運動感覚などは加齢により低下(参照:感覚)。
    視覚は「視力(調節力)の低下、明暗順応の機能低下(順応時間が長くなる)」、聴覚は「高音域と小さい音から聞きにくくなる」、「温度感覚の感度の顕著な低下(閾値が上がる)」。
  3. 心筋が肥大し心臓の重量は増加。最大心拍数は低下、肺活量は減少。
  4. 消化器系運動機能の低下。それによる慢性便秘になりやすくなる。
  5. 嚥下反射が低下し、誤嚥が起こりやすくなる。
  6. 尿の希釈、濃縮力が低下。結果、排尿障害になりやすくなる。
  7. 骨髄中の造血幹細胞は減少。男性ホルモンや女性ホルモンなどは減少。性機能の低下。(甲状腺ホルモンや副腎皮質ホルモンは加齢の影響を受けにくい。)
  8. 睡眠覚醒リズム(概日リズム)は、前進(早寝早起き)、睡眠効率は低下、睡眠時間やレム睡眠が減少。中途覚醒は増える(睡眠時間は10年ごとに10分毎短縮)。
  9. 更年期障害: 女性は、更年期(閉経の前後5年間)に、自律神経失調症状や精神的症状などといった「更年期障害」が現れることもある。
    ( 補足: 更年期障害

<老化による精神の変化>

  1. 近時記憶(最近の記憶)の障害が目立つようになる。遠隔記憶(昔の記憶)は障害がみられにくい。(参照:臨床生理学の記憶
  2. アルツハイマー認知症では、近時記憶とエピソード記憶障害があり、記憶障害に対する自覚を欠くこと(病態失認)が多い。
  3. 知能のピークは60代頃にあると推定されている。結晶性知能である言語性IQは変化が少ない。流動性知能である動作性IQは低下する。(参照:知能と発達


人体の部位・各器官等の構造と機能

 「人体の構造と各器官の機能」、および「その他の機能」についてまとめます。
 男性と女性では、生殖器のみならず、全身の骨格や臓器の形態に差異が認められ、「性差」があります。


人体の構造や機能:
構造・器官説明
骨格構造 全身の骨格は、「体幹(頭蓋、脊柱、胸骨)」と「体肢(上肢、下肢)」よりなり、可動性のある関節結合と可動性のない不動結合でつながっている。
 骨格を動かす筋は「骨格筋」と呼ばれ、心臓の心筋や内臓の壁は「平滑筋」と呼ばれる。
血液血液は、体重の約12分の1である(60kgの人は5リットル)。
 血液は、血球(赤血球、白血球、血小板)と血漿からなる。
呼吸器系 気道と肺からなる。肺は肺胞が集まっており、肺胸膜に覆われている。
循環器系 心臓から全身に血液を送る「体循環」と、肺に血液を送る「肺循環」とに別れる。
  1. 体循環:
    心臓(左心房-左心室)→大動脈→動脈→毛細血管→静脈→大静脈→心臓(右心房-右心室)
  2. 肺循環:
    心臓-右心室→肺動脈→肺→肺静脈→心臓-左心房
*動脈とは、「心臓から押し出される血液の流れる血管のこと」。「肺動脈」とは、心臓から肺へ押し出される血管。
リンパ系 リンパ器官(リンパ節、リンパ管、胸管など)からなり、リンパ液の生成及び、組織の血液成分の回収・移動を担う。
 血液やリンパ液、リンパ節に存在するリンパ球が、免疫系を構成。
内分泌系 ホルモン分泌器官としては、「視床下部と下垂体(前葉・下葉)」「甲状腺」「副腎(皮質・髄質)」「性腺(卵巣・胎盤・精巣)」「膵臓」などがある。
神経系 神経組織は、「神経細胞=ニューロン(神経細胞体、樹状突起、軸索)」と支持細胞からなる。「シナプス」とは、神経細胞間の情報伝達部分(送信・受信部分)である。
 神経細胞間の情報伝達は、細胞膜興奮による活動電位が軸索突起まで達して、シナプスから化学物質が放出され、次の神経細胞のシナプスの受容体に結合することで行われる。
 中枢神経は、脳と脊椎にわけられる。脳の構造と脳神経については、「基礎心理学:脳の構造とその機能」を参照。
感覚器系 感覚には、「視覚(目)」「聴覚(耳)」「嗅覚(鼻)」「味覚(舌)」「平衡感覚」「体性感覚(温・冷覚、痛覚、触覚、圧覚、深部感覚など)」がある(基礎心理学:感覚・知覚)。


生理機能などその他の機能:
構造・器官説明
生理機能 生理機能とは、生命維持に必要な機能のこと。循環、呼吸、消化、内分泌、体温調節、排泄などを指す。
「病態生理」とは、生理機能が病的な状態と、その異常の原因のことを示す。
生体恒常性/
ホメオスタシス
 ホメオスタシスとは、生体が、身体的、生理的状態を一定に維持しようとする働き(Cannon,W.Bが命名)。
 具体的には、「体温の恒常性、血圧の恒常性、血糖の恒常性」があり、恒常性を保つ役割を担うひとつが、自律神経系。
 自律神経系の詳細については、「神経細胞の構造とその機能」参照。
生殖機能 女性には下記のような性周期がある。
  1. 生殖年齢の女性は、約1カ月の性周期で1個の卵胞が完全に成熟する。
  2. 卵胞がエストロゲン(女性ホルモン)を分泌し、子宮粘膜が増殖して厚さをます。
  3. 卵胞から、卵子が排卵されると、卵胞は変化し黄体となり、エストロゲンとプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌される。
  4. 妊娠・着床がない場合は、12日〜14日に月経が起こる。妊娠・着床が生じると、38週後に分娩が起こる。36週前の分娩は早産とされる。
 女性は閉経以降に女性ホルモン(エストロゲン)が低下し、骨粗鬆症の原因となる。



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