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公認心理師試験用語集 : 教育における行政の動向(生徒指導提要・学習指導要領)/スクールカウンセラー

5 - 法律・行政教育に関する法律 > 52- 教育における行政の動向

 ここでは、教育における行政の動向及び、スクールカウンセラーについてまとめます。
用語:

  1. 生徒指導提要学習指導要領アクティブ・ラーニングキャリア教育カリキュラム・マネジメント
  2. 教育評価 : 学習評価カリキュラム評価学校評価Bloom理論(形成的評価・診断的評価) / ルーブリック・ポートフォリオ・パフォーマンス評価
  3. チーム学校コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度) / 学級経営学級崩壊問題行動の現状
  4. スクールカウンセラースクールカウンセラー等活用事業

生徒指導提要の刊行

 「生徒指導提要」には、生徒指導の目的や、そのための指導方針について記載されており、2010(平成22)年に刊行されました。
1986(昭和61)年の「生徒指導の手引」が刊行されて30年以上後の刊行となりました。

 生徒指導では、「1人1人の児童生徒の個性の進展をはかるための指導・援助」、「社会的な資質や能力・態度を育成する指導・援助」、「将来において社会的に自己実現ができるような資質・態度を形成して行くための指導・援助」が行われます。

 そして生徒指導とは「個々の児童生徒の自己指導能力の育成を目指す」ものであり、日々の教育においては、「1) 児童生徒に自己存在感を与えること」、「2) 共感的な人間関係を育成すること」、「3) 自己決定の場を与え自己の可能性の開発を援助すること」を示しています。
 中学校には、生徒指導主事を置くことが、学校教育法に定められています。

 自己指導能力:
 その時、その場で、どのような行動が適切か、自分で判断し、決定して実行する能力。自分自身で、自分をある一定の目標とする方向へ導いていくこと。



学習指導要領の改訂

 「学習指導要領」とは、全国どこの学校でも一定の水準が保てるよう、文部科学省が定めている教育課程(カリキュラム)の基準です。
 新しい学習指導要領に基づく教育が、2020(平成32)年度から小学校から順次、中学校、高等学校において行われています。高等学校で情報教育(情報I)の新設などに代表されます。
 新しい時代に必要となる資質・能力の育成の3つの柱として、
「生きて働く知識・技能の習得」、「未知の状態にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成」、「学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性等の涵養(かんよう)」が挙げられています。
 学校では、教科ごとの枠を超えて、「教科教育、道徳・特別活動、生徒指導、キャリア指導」を統合することが求められるとされます。
 新しい学習指導要領には「児童の発達の支援」(学級経営、生徒指導、キャリア教育、指導の工夫)の節が入っています。


アクティブ・ラーニング:

 新しい学習指導要領では、資質・能力を育成するために「どのように学ぶのか」が重視されており、「主体的・対話的・深い学び」となるようにアクティブ・ラーニングの視点をもつように授業の改善が行われます。
 アクティブ・ラーニングとは「学生にある物事を行わせ、行っている物事について考えさせる」という教授法、学習法とされます(資料)。
 具体的には、教員による一方向の講義形式ではない「発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等」や教室内での「グループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等」を行うことです。


キャリア教育:

 学習指導要領の改訂によって、キャリア教育の充実が図られました。小学校、中学校、高等学校に応じたキャリア教育が行われます。
 小学校においては「低学年、中学年、高学年」の3段階に分かれたキャリア発達の特徴が定められています(資料:文部科学省 小学校キャリア教育の手引き(改訂版))。

  1. 低学年の特徴(学校への適応段階):
     決められた時間や、生活のきまりを守ろうとする、自分の好きなもの,大切なものをもつ。自分のことは自分で行おうとする、など
  2. 中学年の特徴(友達づくり,集団の結束力づくりの段階 ):
     計画づくりの必要性に気づき、作業の手順が分かる。自分のやりたいこと、よいと思うことなどを考え、進んで取り組む。自分仕事に対して責任を感じる、など。
  3. 高学年の特徴(集団の中での役割の自覚の段階):
     自分の長所や短所に気づき、自分らしさを発揮するようになる。仕事における役割の関連性や変化に気づくようになる。将来の夢や希望をもち,実現を目指して努力しようとする、など

カリキュラム・マネジメント:

 「カリキュラム・マネジメント」とは、各学校が教育課程(カリキュラム)の編成、実施、評価、改善を計画的かつ組織的に進め、教育の質を高めることを意味します。
 児童や学校、地域の実態を適切に把握し、各学校の教育目標を明確にするとともに、教育課程の編成についての基本的な方針が家庭や地域とも共有されるよう努めることが重要となっています。
 (関連:カリキュラム評価



教育評価

 「教育評価」とは、教育活動の「対象者(児童・生徒など)」と、「それに対する処遇(指導内容等)」及び、「その成果(習熟度など)」を測定し、それらの関係性を明らかにして、教育活動に役立てることなどと説明できます(参考:岡本, 1989 )。

 (東洋(1976)の定義「教育評価とは、教育活動にかかわる意思決定の資料として、教育活動に参与する諸部分の状態、機能、所産などに関する情報を、規定し、蒐集し、提供する過程である」)
 

  1. 教育評価の対象には、「教育成果(成績など)」に対して影響を与える、教育的な様々な条件である「1. 国の教育制度」、「2. 学校・学級の在り方」、「3. カリキュラム(教育課程)」、「4.学習者の条件に合った処遇」などが含まれる。
  2. 教育評価に関して、「学習評価」、「学校評価」などの指針はあるが、評価基準の決定とその評価は各学校で行われる(全国で統一した基準(≒指標)の基づくわけではない)(参考:冨士原 ,2014 )。
学習評価:

 教育評価における「教育的成果」を測定する方法の1つが「学習評価」だと考えれます。
 学習評価は、学校における教育活動に関し、子供たちの学習状況を評価するものとされてます(文部科学省 )。

  1. 学習指導要領に定める目標に対して、学習状況を分析的に捉える「観点別学習状況の評価」と「総括的に捉える評定」を実施する。
  2. 評価の観点は、「知識・理解」、「技能」、「思考・判断・表現」、「関心・意欲・態度」の四つとなっている。
  3. 各学校が行う学習評価は、ペーパーテストの結果だけでなく、ルーブリック評価・パフォーマンス評価などによる多面的な評価が必要だとされている。
カリキュラム評価:

 カリキュラム評価は、各学校で定めるカリキュラム(教育課程)が教育成果に対してどうであったかを評価する事であり、その対象には「教育内容、教材、授業時間、授業形態などの内部要素」だけでなく「教職員の量と質、施設・設備の状況などの外部要因」が挙げられています(有本, 2005 )。

  1. カリキュラムには、クラブ・サークル・自主ゼミ・自治活動などは含まれない(いわゆる正課外活動)。
  2. 潜在的カリキュラム(隠れたカリキュラム)とは、教育する側が意図する・しないに関わらず、学校生活を営む中で、児童生徒自らが学び取っていく全ての事柄を指すものを意味する。
    (例えば、いじめを許さない学校の雰囲気や文化など)
学校評価:

 学校評価は、子どもたちがより良い教育を享受できるよう、その教育活動等の成果を検証し、学校運営の改善と発展を目指すための取組とされます(文部科学省
 各学校が、自らの教育活動その他の学校運営について、目指すべき目標を設定し、その達成状況や達成に向けた取組の適切さ等について評価します。
 評価には、「自己評価(教職員評価)」、「学校関係者評価(保護者、地域住民等の評価)」、「第三者評価専(専門家評価)」があります。


ブルーム理論(評価方法):

 日本の教育実践の歴史をみると、1970年代の「ブルーム理論」の影響が転換点となったとされています。ブルーム(Bloom)理論には「形成的評価の理論(診断的評価・総括的評価)」や「マスタリーラーニング(完全習得)理論」などといったものがあります(文献:古川,2014)。

 ブルームは、教育における評価を指導上の機能から「診断的評価」、「形成的評価」、「総括的評価」に評価をわかれています。教員の指導法を最適化することを目的とした教育評価といえます。

  1. 診断的評価 :
     新しい学習を始める前に必要となる知識や技能が習得されているかを見取る(把握する)評価。指導計画に活用される。
  2. 形成的評価 :
     学習途上で、進捗やつまづきがないかを把握する中間的な評価。学習指導の改善の機能を持つ。
  3. 総括的評価 :
     まとめのテストの結果。一定の教育活動が終了した際に、その効果を把握する評価。

 ( 詳細: その他のブルーム理論


ルーブリック・ポートフォリオ・パフォーマンス評価:

 教育における「学習評価」の評価指標や評価法には下記のようなものがあります。

  1. ルーブリック:
     レベルの目安を数段階に分けて記述して、学習達成度を判断する指標。観点と尺度からなる表として示されている。  
  2. ポートフォリオ:
     児童生徒1人1人が作成した作文、作品、テストや、活動の様子が分かる写真などをファイルに入れて保存する方法。
     そのファイル等を活用して児童生徒の学習状況を把握するとともに、児童生徒や保護者等に対し、その成長の過程や到達点、今後の課題等を示す。
  3. パフォーマンス評価:
     知識やスキルを使いこなす(活用・応用・統合する)ことを求めるような評価方法。
     レポート、展示物といった完成作品(プロダクト)や、スピーチやプレゼンテーション、協同での問題解決、実験の実施といった実演(狭義のパフォーマンス)を評価する。

 その他の用語として「ドキュメンテーション」、「テスト・リテラシー」について説明します。
 「ドキュメンテーション」は、子ども同士の関係や、子どもと親の関係などを示したプロジェクト活動の記録を意味します。主に保育で活用され、子どもの活動や学びの過程の可視化することに重点がおかれています。
 「テスト・リテラシー」はテストを活用する能力を意味しています。テストを作成する技能などがあります。




チーム学校の答申

 2015(平成27年)年に中央教育審議会から、「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」が出されました。
 児童生徒の学力などの多様な能力を効果的に高めていくために、学校組織の在り方の改善方策が提案されています。

<学校組織の在り方の改善方策>
1)専門性に基づくチーム体制の構築
  1. ステップ1:
     教職員の指導体制の充実。それぞれの専門性を生かしたチームとしての教育活動
  2. ステップ2:
     専門スタッフの参画(スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー)
  3. ステップ3:
     地域との連携体制の整備 (福祉施設、医療機関など)
2)学校マネジメント機能の強化
 校長のリーダシップ、副校長・教頭・事務長などによるマネジメントの強化が求められる。
3)教職員一人一人が力を発揮できる環境の整備
 人材育成や業務環境の改善等の取り組みを行う。



コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)

 「コミュニティ・スクール」とは、学校と地域住民等が力を合わせて運営していく学校のことです。
 「学校運営協議会制度」とは、学校運営に地域住民の声を積極的に生かし、地域と一体となって特色ある学校づくりを進めていく制度です。
 平成29年4月1日より「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の改正が施行され、市町村教育委員会に対して、各学校への学校運営協議会設置の”努力義務”が定められました。学校運営協議会には、主に3つの役割があります(引用)。

  1. 校長が作成する学校運営の基本方針を承認する
  2. 学校運営に関する意見を教育委員会又は校長に述べることができる
  3. 教職員の任用に関して、教育委員会規則に定める事項について、教育委員会に意見を述べることができる
     協議会は、上記の役割において「保護者や住民等から意見を聴く」、「学校運営や支援に関する協議を行う」、「協議結果を保護者・住民等へ情報提供する(努力義務)」といった業務も果たします。

 学校運営協議会の委員は、保護者代表や地域住民、地域学校協働活動推進員(コーディネーター:地域と学校との連絡調整役)などから選任されます。その任命は「市町村教育委員会」が校長の意見を反映して行います。





学級経営

 学級経営は「児童・生徒が学校での学習や生活を、適正に展開するための担任教師の学級活動(ホームルーム活動)」を意味します。
 学習指導要領の実施においても、小・中・高等学校を通じた学級・ホームルーム経営の充実を図ることは重要とされています。下記に学級経営の要点をまとめます。

  1. 効果的な学級経営には、教師のリーダーシップスタイルの影響が大きい。
  2. 初期は、教師主導による学級におけるルール・規範を中心とした構造づくりと、学級内の人間関係づくり(児童・生徒同士、教師と児童・生徒)を行う。
  3. 学級づくりの1つの方法として、構成的グループエンカウンターがある。
  4. 学級集団のアセスメントツールには、「Q-U」(よりよい学校生活と友達づくりのための児童・生徒向けのアンケート)などを用いる。
学級崩壊:

 学級崩壊とは、教師の指導が子どもに通じず、学級の日常機能(生活機能や学習機能)が不全に陥る事象とされます。
 学級経営における教師のリーダーシップが学級崩壊に影響するとされています。
 学級崩壊の対応としては、下記が挙げられています(資料)。

  1. 学校全体として、状況を把握し、役割分担をして取り組む。
  2. 学年経営の視点をもち、学年職員を中心として、学年での活動を増やすなど、児童や担任に気持ちを切り替える機会を作る。
    担任と児童との改善を図り、保護者とともに取り組む。
  3. 授業の改善に取組み、学級の状態や児童の実態に合った指導法を見直す。
  4. 問題を抱える児童の状況の把握し、関係機関と連携しながらチームで対応する。

近年の問題行動(暴力行為)の現状:

 近年の学校での児童の問題行動は下記のようになっています(令和元年)。

  1. 学校管理下の暴力行為の発生件数はおおよそ「小学校が4万件、中学校が3万件、高等学校が0.6万件」であり、小学校が一番多い。
  2. 学校管理下の1000人あたりの暴力発生件数(発生率)はおおよそ「小学校が6.5件、中学校が8.4件、高等学校が2件」であり中学校が高い。



スクールカウンセラー・スクールカウンセラー等活用事業

 教育領域での心理職としては、スクールカウンセラーが主となりますが、2017(平成29)年には、学校教育法施行規則にスクールカウンセラーが規定されました。

 スクールカウンセラーの職務内容(任用規定)としては、下記の3つが定められています( 文部科学省 )。

  1. 「児童・生徒たちへの心理カウンセリング」
  2. 「教職員に対する助言・援助」
  3. 「保護者に対する助言・援助」

 スクールカウンセラーは、下記のような役割を果たしています(資料1; 資料2 )。

  1. 児童・生徒に対する相談・助言
  2. 保護者や教職員に対する相談(カウンセリング、コンサルテーション
  3. 校内会議等への参加
  4. 教職員や児童生徒への研修や講話
  5. 相談者への心理的な見立てや対応
  6. ストレスチェックやストレスマネジメント等の予防的対応
  7. 事件・事故等の緊急対応における被害児童生徒の心のケア
  8. 「全員面接」による、相談しやすい環境作り、相談の発掘、いじめの発見・防止

 スクールカウンセラーは、学校の管理下での職務となりますので、学校における心理教育的援助サービスの枠組み(援助サービス/ヘルパー/援助システム・チームの構成)に留意します。
 また、校長や管理職への報告・連絡・相談は必須となります。

 教育動向の変化により、スクールカウンセラーの役割は下記のような幅広い支援のニーズがあります。

  1. いじめ防止対策:
     スクールカウンセラーは、いじめの予防や事案の組織対応において、いじめ対策委員会議などの組織メンバーとして積極的にかかわり、いじめの被害児童、加害児童の支援を行います。また、児童生徒との全員面接によるいじめの発見や防止も重要視されています。
  2. 障害のある児童やご家族への支援:
     学校・家庭・地域の連携により、障害のある児童生徒の特性や状態に応じて「個別の教育支援計画」や「個別指導計画」の作成を推進する責任があります。スクールカウンセラーは、心理的アセスメント、子どもへの心理支援者、教員・保護者らへのコンサルテーションを行うことが求められます。
     また、「合理的配慮」の具体化において、児童生徒の援助のニーズおよび、意思の把握、ニーズに応じる方法の提案と、合理的配慮を決定するプロセスにおいて、保護者等を心理的に援助します。
  3. 児童の発達支援:
     学習指導要領の改訂に伴い、児童発達支援として、学級経営、生徒指導、キャリア教育、指導の工夫が記載されているため、子供の資質・能力を育てることにも貢献が求められます。

スクールカウンセラー等活用事業:

 スクールカウンセラー等活用事業とは、「学校等」に対して、「都道府県・指定都市」が主体となり下記の3つを行う事業です(文部科学省)。
 「学校等」とは、「公立」の小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、及び地方公共団体が設置する児童生徒の教育相談を受ける機関をさします。

  1. 学校等へ、児童生徒の心理に関して高度に専門的な知識・経験を有するスクールカウンセラー又はスクールカウンセラーに準ずる者(スクールカウンセラー等)を配置する。
  2. 24時間体制の電話相談を実施し、教育相談体制を整備する。
  3. 被災した児童生徒等の心のケア、教職員・保護者等への助言・援助等を行うため、学校等(公立幼稚園を含める)にスクールカウンセラー等を緊急配置する。

 事業の主体は「都道府県・指定都市」であり、国は対象経費に対して補助を行います。
スクールカウンセラー等は、「単独校方式(通常配置)、拠点校方式、巡回方式」といった方式で学校等に配置されます。

 高校(公立高等学校)へのスクールカウンセラー等の配置については、事業の実施に係る配置校の総数の「10%以内」を目安とされています。
 都道府県によって異なりますが、全国では小学校が最も多く配置されており、次に中学校が多いというデータがあります(平成30年度)。




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