ここでは、教育における行政の動向及び、スクールカウンセラーについてまとめます。
用語:
「生徒指導提要」には、生徒指導の目的や、そのための指導方針について記載されており、2010(平成22)年に刊行されました。
1986(昭和61)年の「生徒指導の手引」が刊行されて30年以上後の刊行となりました。
生徒指導では、「1人1人の児童生徒の個性の進展をはかるための指導・援助」、「社会的な資質や能力・態度を育成する指導・援助」、「将来において社会的に自己実現ができるような資質・態度を形成して行くための指導・援助」が行われます。
そして生徒指導とは「個々の児童生徒の自己指導能力の育成を目指す」ものであり、日々の教育においては、「1) 児童生徒に自己存在感を与えること」、「2) 共感的な人間関係を育成すること」、「3) 自己決定の場を与え自己の可能性の開発を援助すること」を示しています。
中学校には、生徒指導主事を置くことが、学校教育法に定められています。
自己指導能力:
その時、その場で、どのような行動が適切か、自分で判断し、決定して実行する能力。自分自身で、自分をある一定の目標とする方向へ導いていくこと。
「学習指導要領」とは、全国どこの学校でも一定の水準が保てるよう、文部科学省が定めている教育課程(カリキュラム)の基準です。
新しい学習指導要領に基づく教育が、2020(平成32)年度から小学校から順次、中学校、高等学校において行われています。高等学校で情報教育(情報I)の新設などに代表されます。
新しい時代に必要となる資質・能力の育成の3つの柱として、
「生きて働く知識・技能の習得」、「未知の状態にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成」、「学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性等の涵養(かんよう)」が挙げられています。
学校では、教科ごとの枠を超えて、「教科教育、道徳・特別活動、生徒指導、キャリア指導」を統合することが求められるとされます。
新しい学習指導要領には「児童の発達の支援」(学級経営、生徒指導、キャリア教育、指導の工夫)の節が入っています。
新しい学習指導要領では、資質・能力を育成するために「どのように学ぶのか」が重視されており、「主体的・対話的・深い学び」となるようにアクティブ・ラーニングの視点をもつように授業の改善が行われます。
アクティブ・ラーニングとは「学生にある物事を行わせ、行っている物事について考えさせる」という教授法、学習法とされます(資料)。
具体的には、教員による一方向の講義形式ではない「発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等」や教室内での「グループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等」を行うことです。
学習指導要領の改訂によって、キャリア教育の充実が図られました。小学校、中学校、高等学校に応じたキャリア教育が行われます。
小学校においては「低学年、中学年、高学年」の3段階に分かれたキャリア発達の特徴が定められています(資料:文部科学省 小学校キャリア教育の手引き(改訂版))。
(補足: ▼ 低・中・高学年のキャリア発達の特徴一覧表 )
「カリキュラム・マネジメント」とは、各学校が教育課程(カリキュラム)の編成、実施、評価、改善を計画的かつ組織的に進め、教育の質を高めることを意味します。
児童や学校、地域の実態を適切に把握し、各学校の教育目標を明確にするとともに、教育課程の編成についての基本的な方針が家庭や地域とも共有されるよう努めることが重要となっています。
(関連:カリキュラム評価)
「教育評価」とは、教育活動の「対象者(児童・生徒など)」と、「それに対する処遇(指導内容等)」及び、「その成果(習熟度など)」を測定し、それらの関係性を明らかにして、教育活動に役立てることなどと説明できます(参考:岡本, 1989 )。
(東洋(1976)の定義「教育評価とは、教育活動にかかわる意思決定の資料として、教育活動に参与する諸部分の状態、機能、所産などに関する情報を、規定し、蒐集し、提供する過程である」)
教育評価における「教育的成果」を測定する方法の1つが「学習評価」だと考えれます。
学習評価は、学校における教育活動に関し、子供たちの学習状況を評価するものとされてます(文部科学省 )。
カリキュラム評価は、各学校で定めるカリキュラム(教育課程)が教育成果に対してどうであったかを評価する事であり、その対象には「教育内容、教材、授業時間、授業形態などの内部要素」だけでなく「教職員の量と質、施設・設備の状況などの外部要因」が挙げられています(有本, 2005 )。
学校評価は、子どもたちがより良い教育を享受できるよう、その教育活動等の成果を検証し、学校運営の改善と発展を目指すための取組とされます(文部科学省 )
各学校が、自らの教育活動その他の学校運営について、目指すべき目標を設定し、その達成状況や達成に向けた取組の適切さ等について評価します。
評価には、「自己評価(教職員評価)」、「学校関係者評価(保護者、地域住民等の評価)」、「第三者評価専(専門家評価)」があります。
日本の教育実践の歴史をみると、1970年代の「ブルーム理論」の影響が転換点となったとされています。ブルーム(Bloom)理論には「形成的評価の理論(診断的評価・総括的評価)」や「マスタリーラーニング(完全習得)理論」などといったものがあります(文献:古川,2014)。
ブルームは、教育における評価を指導上の機能から「診断的評価」、「形成的評価」、「総括的評価」に評価をわかれています。教員の指導法を最適化することを目的とした教育評価といえます。
( 詳細: ▼ その他のブルーム理論 )
教育における「学習評価」の評価指標や評価法には下記のようなものがあります。
その他の用語として「ドキュメンテーション」、「テスト・リテラシー」について説明します。
「ドキュメンテーション」は、子ども同士の関係や、子どもと親の関係などを示したプロジェクト活動の記録を意味します。主に保育で活用され、子どもの活動や学びの過程の可視化することに重点がおかれています。
「テスト・リテラシー」はテストを活用する能力を意味しています。テストを作成する技能などがあります。
2015(平成27年)年に中央教育審議会から、「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」が出されました。
児童生徒の学力などの多様な能力を効果的に高めていくために、学校組織の在り方の改善方策が提案されています。
<学校組織の在り方の改善方策> |
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1)専門性に基づくチーム体制の構築 |
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2)学校マネジメント機能の強化 |
校長のリーダシップ、副校長・教頭・事務長などによるマネジメントの強化が求められる。 |
3)教職員一人一人が力を発揮できる環境の整備 |
人材育成や業務環境の改善等の取り組みを行う。 |
「コミュニティ・スクール」とは、学校と地域住民等が力を合わせて運営していく学校のことです。
「学校運営協議会制度」とは、学校運営に地域住民の声を積極的に生かし、地域と一体となって特色ある学校づくりを進めていく制度です。
平成29年4月1日より「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の改正が施行され、市町村教育委員会に対して、各学校への学校運営協議会設置の”努力義務”が定められました。学校運営協議会には、主に3つの役割があります(引用)。
学校運営協議会の委員は、保護者代表や地域住民、地域学校協働活動推進員(コーディネーター:地域と学校との連絡調整役)などから選任されます。その任命は「市町村教育委員会」が校長の意見を反映して行います。
学級経営は「児童・生徒が学校での学習や生活を、適正に展開するための担任教師の学級活動(ホームルーム活動)」を意味します。
学習指導要領の実施においても、小・中・高等学校を通じた学級・ホームルーム経営の充実を図ることは重要とされています。下記に学級経営の要点をまとめます。
学級崩壊とは、教師の指導が子どもに通じず、学級の日常機能(生活機能や学習機能)が不全に陥る事象とされます。
学級経営における教師のリーダーシップが学級崩壊に影響するとされています。
学級崩壊の対応としては、下記が挙げられています(資料)。
近年の学校での児童の問題行動は下記のようになっています(令和元年)。
教育領域での心理職としては、スクールカウンセラーが主となりますが、2017(平成29)年には、学校教育法施行規則にスクールカウンセラーが規定されました。
スクールカウンセラーの職務内容(任用規定)としては、下記の3つが定められています( 文部科学省 )。
スクールカウンセラーは、下記のような役割を果たしています(資料1; 資料2 )。
スクールカウンセラーは、学校の管理下での職務となりますので、学校における心理教育的援助サービスの枠組み(援助サービス/ヘルパー/援助システム・チームの構成)に留意します。
また、校長や管理職への報告・連絡・相談は必須となります。
教育動向の変化により、スクールカウンセラーの役割は下記のような幅広い支援のニーズがあります。
スクールカウンセラー等活用事業とは、「学校等」に対して、「都道府県・指定都市」が主体となり下記の3つを行う事業です(文部科学省)。
「学校等」とは、「公立」の小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、及び地方公共団体が設置する児童生徒の教育相談を受ける機関をさします。
事業の主体は「都道府県・指定都市」であり、国は対象経費に対して補助を行います。
スクールカウンセラー等は、「単独校方式(通常配置)、拠点校方式、巡回方式」といった方式で学校等に配置されます。
( 補足: ▼ 単独校・拠点校・巡回方式)
高校(公立高等学校)へのスクールカウンセラー等の配置については、事業の実施に係る配置校の総数の「10%以内」を目安とされています。
都道府県によって異なりますが、全国では小学校が最も多く配置されており、次に中学校が多いというデータがあります(平成30年度)。