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心理学用語集: エリクソンのライフサイクル理論

1 - 基礎心理学発達 > 44- エリクソンのライフサイクル理論

 ライフサイクル理論といえば、「エリクソンのライフサイクル理論」が一番に思い付きます。ここでは、「ユングのライフサイクル的理論」と「エリクソンのライフサイクル理論」についてまとめます。
 また、青年期の危機やグループといった発達の特徴についても記載します。
用語:

  1. ユング(Jung)のライフサイクル的理論(人生の正午・個性化)
  2. エリクソン(Erikson)のライフサイクル理論(発達課題・危機・獲得)
  3. アイデンティティ(自我同一性)・モラトリアムアイデンティティ・ステータス / 思春期・青年期危機
  4. 青年期の仲間関係の発達(ギャング, チャム, ピア)


ユングのライフサイクル的理論

 ライフサイクルとは、人生の経過を円環に描いて説明したものです。最初にライフサイクル論的なものの見方をしたのはJung,C.G(ユング)だといわれています。

 ユングは、ライフサイクルを「少年期」、「成人前期」、「中年期」、「老人期」の4段階に分けました。
この中で、問題になる時期は「成人前期と中年期」であり、最大の危機は中年期の転換期にあるとしました。

 男性は、40歳までは、色々なものを犠牲にしながら、社会的成功を目指し突き進んでいきますが、40歳前後で「人生の正午」を迎え、今のまま、未来が永遠に続かないことに気づきます。そして、40歳以降は、今まで犠牲にしてきたものを、もう一度自分の中に取り戻していくことが必要だと述べました。
 この後半の過程を、「個性化の過程」と呼んでいます。
(関連用語:中年の危機



エリクソンのライフサイクル理論

 Erikson,E.Hエリクソン)のライフサイクル論は、Freud,Sの発達論が、思春期までを対象とし、心理-性的・心理-生物学的であったのに対し、個人の発達は社会との相互作用で起こるとする「心理-社会的側面」を重視し、生涯発達理論に拡張したものです。

 この理論では、各機能の発達には臨界期があると考える生物学的漸成説を基盤とし、それぞれに特定の人生課題=発達課題がある8つの「発達段階」を質的変化の過程として捉えました。
対人関係的、社会的活動の基盤となる心理特性の獲得が各発達段階で求められます。

以下に、8つの発達段階と、その段階における「心理社会的課題と危機」、課題を乗り越えることで「獲得するもの」、フロイトの「心理性的発達理論との関係」についてまとめます。

     
発達段階課題と危機 獲得
1.乳児期
(0歳-2歳)
基本的信頼/不信 希望

[口唇期へ対応]
母親の無条件の愛=>自己への信頼へ

2.幼児期
(3歳-4歳)
自律性/恥、疑惑 意思

[肛門期へ対応]
親の内在化=>失敗:恥、疑念へ

3.遊戯期
(5歳-7歳)
自発性/罪悪感 目的

[男根期へ対応]
衝突による敗北感や罪悪感を受ける

4.学童期
(8歳-12歳)
勤勉性/劣等感 有能感

[潜伏期へ対応]

5.青年期
(13歳-22歳)
自我同一性/拡散 忠誠性

[性器期へ対応]

6.前成人期
(23歳-34歳)
親密性/孤独

自分と他者の同一性の共存、融合

7.成人期
(35歳-60歳)
生殖性(次世代育成能力)/停滞 世話

Generativity(ジェネラティビティ:次世代の育成能力、生成継承性、生殖性)

8.老年期
(61歳- )
統合性/絶望 英知


自我同一性(アイデンティティ)

 エリクソンのライフサイクル理論の発達課題の中で最も重要な概念は、青年期に獲得か拡散の危機を迎えるとされる「自我同一性(アイデンティティ)」です。
 アイデンティティとは、「自分は一体何者かという自問に対する肯定的かつ確信的な回答を持っていること」です。その回答には時間的一貫性と空間的自他境界の明確さがあるとされます。

 「アイデンティティの危機(拡散/混乱)」とは、「自分の人生において責任のある主観的選択ができず、自己嫌悪感と無力感を持ち、時間的展望の喪失、労働麻痺に特徴付けられる状態」です。自我同一性の危機に、その人の生活する文化に、価値の多様性と選択性がある場合に生じるとされます。
 現在、マスメディアなどで取り上げられやすい心理的問題であるひきこもり、不登校、ひきこもり、ニートなどもアイデンティティ危機と密接な関係のある問題と言えます。

 「モラトリアム」とは、青年期において、自我同一性の形成のために社会から与えられる猶予期間を意味します。



アイデンティティ・ステータス:

 Marciaマーシャ)は自我同一性についての研究を行い、「アイデンティティステイタス」(自我同一性の状態)には下記の4つの地位があると示しました。

  1. アイデンティティ確立志向型(同一性達成型)
  2. アイデンティティ早期完了型
  3. モラトリアム型
  4. アイデンティティ拡散型(同一性拡散型)

 自我同一性地位の4つは、「危機状態の有無」(迷いや葛藤の時期の有無)と「コミットメント(傾倒)の有無」(危機状態への積極的関与の有無)の組み合わせで決まっています。

( 詳細:▼ アイデンティティステータス/自我同一性地位 )


思春期危機/青年期危機(adolescent crisis):

 精神医学において「思春期危機(adolescent crisis)」または「青春期危機」という用語があります。
(adolescentの年齢の定義には、15歳〜25歳、10歳〜25歳などがあり、成人・児童とも一部重なります)。
 Adolescentは、身体的・生理学的の大きな変化が生じる事や、心理的な独立やアイデンティティの課題とも重なる時期であるため、精神的な不安定を招くと考えられます。統合失調症、うつ病、社交不安症などの精神疾患の発症が増える時期でもあります。

<身体的・生理学的側面>

  1. 二次性徴」の出現(月経・性器発達など)
  2.  思春期の急激な身長の伸び等を表す「成長(発育)のスパート」がみられる、など

<心理的・社会的側面>

  1. アイデンティティの発達課題・モラトリアム
  2. 大人とは認められない(未熟な存在)への不安定さや「心理的離乳」など
    (心理的離乳とは、両親への依存から離脱し、一人前の人間としての自我を確立しようとする心の動き)

(参照:レビンソンの中年の危機




青年期の仲間関係の発達

 青年期は、第二の個体化過程(Bols,1967)といわれ、親からの自立に伴う不安を乗り越えるため、親に代わる安全基地として「仲間関係」が重要な意味を持つとされます。
 青年期の仲間関係のプロセスには下記の3つの発達段階があるとされます(保坂・岡村,1992)。

  1. ギャンググループ(Gang-group):
     小学校高学年頃にみられるグループ。
    「外面的な同一行動」による一体感を特徴とする。
     グループの承認が親の承認よりも重要となってくる。
  2. チャムグループ(Chum-group):
     中学生頃にみられるグループ。
    「内面的な類似性の確認」(趣味やクラブ活動など)による一体感を特徴とする。
     Sullivan,H.Sのいう、chumに対応する。
  3. ピアグループ(Peer-group):
     高校生以上にみられるグループ。
    「内面・外面的にも互いに自立した個人として認め合い、価値観や理想を語り合う」という関係を特徴とする。
 


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