ここでは、投映法のうち描画法である「風景構成法」についてまとめます。
「風景構成法」とは、中井久夫によって1969年に統合失調者への接近的治療法として開発された絵画による芸術療法であり、描画法でもあります。
風景構成法は、箱庭療法の影響や、ナウムバーグ(Naumburg,M)のなぐり描き法に影響されていますが、下記の特徴があります。
中井久夫は、河合隼雄の「統合失調症患者が、箱庭の中にさらに柵をめぐらす傾向がある」という示唆から「枠付け法」を考案しました。
枠付け法は、「画用紙に治療者自らが枠を描き入れること」で、患者又は被検者に安全保障感と保護を与えます。そして、「防衛的で虚栄的な表現や、現実に引きずられた表現になる事」を防ぎます。
枠付け法は、被検者に表現に保護を与える一方で、表出を強いるという「両価性」を持ちます(保護する事と強いる事が同時に存在している)。
風景構成法の適用年齢は風景の概念がわかる「およそ6歳以上」とされます。
風景構成法では、「黒のサインペン」を用いて、「川、山、田、道、家、森、人、花、動物、石」の10個と「その他足らないと思うもの」のアイテムを描いてもらいます。
「大景群」→「中景群」→「小景群」の順番で教示していきます。
その後、クレヨン等で彩色してもらいます(順番は問わない)。
描画後には、描いた順番に網羅的に聞くわけではありませんが、必要な質問を行います。
風景構成法の解釈は標準化されていません。
「箱庭療法の解釈」は参考になるとされますが、「描画法の空間図式の適用」は必ずしも適当でないとされます。
中井久夫によって提示されている「空間構成の諸形式」を用いた解釈法が1つの方法とされています。
空間の構成の仕方によって、疾患特異性を見定めようとする方法です。統合失調症のタイプや疾病類型との対応を
見ることができるとされています。
例)キメラ的多空間現象は統合失調症の妄想型を示す。鳥瞰図現象は躁病を示すなど。