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心理学用語集: 心理検査(概要)

4 - 心理査定・検査心理的アセスメント > 15- 心理検査(概要)

 ここでは、心理的アセスメントの方法である「心理検査」の概要についてまとめます。

 心理検査とは、「人間の知能、パーソナリティ、発達、精神機能や心理状態などがどのようなものであるかを知り、個人や集団を理解するための検査」をさします。

 心理検査の種類は、「検査対象」の観点と「検査方法」の観点から分類されます。
用語:

  1. 知能検査発達検査パーソナリティ認知機能心理状態等
  2. 質問紙法投映法(投影法)/ 作業検査法IAT(潜在連合テスト)
  3. 臨床心理検査以外の尺度等(BI, JCS, VRT)


心理検査の測定対象

 心理検査の検査対象としては、「知能」、「発達」、「パーソナリティ(人格)」、「認知機能(神経心理)」、「心理状態」が挙げられます。
 各測定対象に対する心理検査の例を下表にまとめます。

対象代表的な心理検査名
知能検査知能検査(概要)説明
  1. 田中ビネー知能検査
  2. ウェクスラー式知能検査(WPPSI・WISC・WAIS)
  3. K-ABC心理・教育アセスメントバッテリー
  4. DAM(グッドイナフ人物画知能検査)
  5. DN-CASITPA
発達検査乳幼児・児童等の発達検査
  1. 日本版デンバー式発達スクリーニング検査
  2. 新版K式発達検査2001
  3. 新版S-M社会生活能力検査
  4. 津守式乳幼児精神発達診断法
  5. Vineland、CBCLなど
自閉スペクトラム症検査
  1. M-CHAT、AQ、SRS-2
  2. PARS-TR、ADI-R
  3. ADOS-2、CARS
注意欠如/多動症検査
  1. ADHD-RS、Conners3
  2. CAARS、ASRS、CAADID
パーソナリティ
  1. MMPI(ミネソタ多面人格目録)
  2. YG性格検査(矢田部ギルフォード)
  3. TEG(東大式エゴグラム)
  4. NEO-PI-R
  5. ロールシャッハテスト
  6. TAT(主題統覚検査)
  7. バウムテスト
  8. HTP・HTTPテスト、など
神経心理学的/
認知機能検査
神経心理学的検査
  1. ベンダー・ゲシュタルト・テスト
  2. 三宅式記銘力検査
  3. ベントン視覚記銘検査
  4. BADS、TMT、WCST
  5. COGNISTAT、など
認知症検査
  1. 長谷川式認知症スケール(HDS-R)
  2. MMSE、MSQなど
心理状態等不安・健康状態・抑うつ
  1. MAS(顕在性不安尺度)、STAI(状態-特性不安質問尺度)
  2. LSAS-J(リーボヴィッツ社交不安尺度)、GAD-7
  3. CMI(コーネル健康調査票)、GHQ(精神健康調査票)
  4. BDI(ベック抑うつ質問票)、SDS(うつ性自己評価尺度)など
強迫症
  1. Y-BOCS(エール・ブラウン強迫尺度)
心的外傷性ストレス症状
  1. IES-R(改訂出来事インパクト尺度)、CAPS

補足:「臨床心理以外の検査や尺度等
 (バーセルインデックス:BI / ジャパン・コーマ・スケール:JCS / 職業レディネス・テスト:VRT)



心理検査の方法:質問紙法

「心理検査の測定対象」に対して、「心理検査の方法」としては「質問紙法」、「投映法(投影法)」、「作業検査法」が挙げられます。
 ここからは、それぞれの代表的な心理検査名と特徴をまとめます。

 質問紙法は、「質問項目に対して選択回答や自由回答を行う方法」です。
 回答方法としては、一般的なアンケートと同じになります。
 
 質問紙は「パーソナリティ」や「心理状態」を測定対象とします。
 実施が容易であるといった長所と、回答が歪曲されやすいといった短所などがあります。

     
質問紙法の代表的な検査名
  1. パーソナリティ検査
     矢田部ギルフォード性格検査、MMPI、TEG、NEO-PI-R、MPI
  2. 心理状態検査
     MAS、STAI、GHQ、BDI、SDS
  3.  
質問紙法の長所
  1. 一度に多くのデータが収集可能(集団実施可)
  2. 実施や結果の整理が容易
  3. 結果に検査者の主観が入りにくい
質問紙法の短所
  1. 回答が歪曲されてしまう(虚偽や社会的に望ましい回答)
  2. 質問内容が言語能力に依存してしまう
  3. 回答結果以外の行動過程などのデータを得られない。
  4. 深層心理(無意識)まで捉えることができない。


心理検査の方法:投映法(投影法)

 投映法(投影法)は、「視覚的・言語的刺激の素材を提示し、自由に反応してもらう方法」です。

 投映法は「パーソナリティ」を測定対象とし、長所として回答の歪曲が難しい、短所として実施に時間や技能を要するといったなどがあります。

投映法(投影法)の代表的な検査名
  1. パーソナリティ検査
    ロールシャッハテスト、TAT、P-Fスタディ、SCT、ソンディテスト、描画法(バウムテスト、HTP、HTPP、S-HTP、風景構成法)
投映法(投影法)の長所
  1. 何を測定されているかわかりにくいため、意図的な回答の歪曲がされにくい。
  2. 深層心理(前意識・無意識)まで捉えることが可能。
投映法(投影法)の短所
  1. 実施に時間がかかるため、被検者に負担がかかる。
  2. 実施や解釈に検査者の技能を要する。
  3. 解釈に検査者の主観が入りやすく、信頼性・妥当性に疑問が生じやすい。

 「描画法」は、子どもなど、言語表現が困難なクライエントに対しても有効な心理検査の方法です。
 描画を通して表現することによって、カタルシス効果が得られるという治療的な効果も見込まれます。

 描画法は「侵襲性」が高いため、統合失調症など精神病水準のクライエントに用いると、自己・他者や内面・外面の区別が崩れる可能性があるとされます。そのため描画法の適用には注意が必要とされます。
詳細:▼ 侵襲性とは



心理検査の方法:作業検査法

 作業検査法は「簡単な作業を行ってもらう方法」です。
 作業検査法は「パーソナリティ」を測定対象とします。
 回答の歪曲が難しいといった長所と、作業へのモチベーションが影響しやすいといった短所などがあります。

作業検査法の代表的な検査名
  1. <パーソナリティ検査>
    内田クレペリン精神作業検査ベンダー・ゲシュタルト・テスト
  2. <神経心理学的検査>
    ベンダー・ゲシュタルト・テスト
作業検査法の長所
  1. 何を測定されているかわかりにくいため、意図的な回答の歪曲がされにくい。
  2. 実施や結果の整理が容易である。
  3. 言語的な反応を必要とせず、言語表現が困難でも実施可能。
作業検査法の短所
  1. 作業に対するモチベーションが結果に影響しやすい。
  2. 単調な作業のため、被験者が苦痛を感じる可能性がある。


IAT(潜在連合テスト):

 「IAT:Implicit Association Test(潜在連合テスト)」とは、「潜在的な態度や信念」を測定するテストです。
 被検者にカード等の対象を分類させた時の回答時間から、被検者が「意識的に他者から隠していること」と「意識せずに隠していること」の両方を測定することが可能とされています。
 東京大学が日本人の自尊心をIATによって測定したところ、日本人は米国並みの自尊心であるという報告もされています。



参考:臨床心理検査以外の尺度等

 公認心理師試験の選択肢に登場した臨床心理以外の検査や尺度などを記載します。

  1. バーセルインデックス(BI:Barthel Index) :
     介護度判定などで使われる日常生活動作(ADL)の評価法です。介護報酬が加算されるのは「機能訓練指導員(理学療法士、作業療法士、看護師等の有資格者)」によって行われた場合です。
  2. グラスゴーコーマスケール(GCS) / ジャパン・コーマ・スケール(JCS):
     意識障害の深度(意識レベル)分類の事です。頭部外傷患者等に、救急初期診療として用いられるようです。
  3. 職業レディネス・テスト(VRT):
     将来の職業や生き方を考えることを援助する進路探索用検査です。


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